告げることすら







五番隊の隊員は比較的真面目な奴が多い。俺が隊長やのに、ようこんだけ真面目な奴が揃うたなァと思う位。そんな中、先日入隊してきたっちゅうのは、明らかに五番隊の隊風には馴染まへん奴やった。不真面目、と言うと語弊があるものの、優等生的な隊員が多い中では、明らかに異質な存在。雰囲気が気だるげで、試すような視線で人を見据える。そのくせ笑うと目尻がきゅっと下がって、見てる方がはっとしてしまう程、可愛らしい。難儀な奴が入ってきよった。それが第一印象やった。


そしてその難儀な奴は、ほんまに難儀な奴やった。


「…喉、渇いちゃった」


そう言われて俺はゆっくり振り返る。そこには、掛布を臍の辺りまでかけただけで、裸の上半身を露わにして寝台に横たわっているの姿があった。恥じらいっちゅうもんが無いんか、この女は。心の中でそう思うも、俺は黙って水を差し出してやった。はゆっくり体を起こしてそれを受け取る。柔らかそうな腹部に、俺の残した鬱血の痕があった。


「あ、おいし」
「ただの水道水や」
「汗かいた後だから美味しく感じるんですね、きっと」


はわざとらしくそう言って、にやりと笑った。あ、こういう笑い方もするんやな。こういう顔も悪くはない。はこくこくと喉を鳴らして水を飲み干すと、まっすぐに俺を見つめた。


「異動したての問題児と、そこの隊長サマが、こんなことしちゃっていいんですか?」
「…そんなもん、してもうたもんはしゃあないやろ」


自分に言い聞かせるような台詞。けど、後悔してへん自分がいることに笑えた。誰かに知られたら絶対めんどくさいことになるのに、俺はこの女を抱いたことを後悔するどころか、もう1度抱きたいとすら思っている。華奢な首筋に噛み付きたいと、そう思いながら、見ている。


「…変な気ィ遣わんでええからな。周りに黙っといてくれとも言わんし」
「ふふ、言いませんよ、誰にも。こんなの珍しいことでも何でも無いんでしょう?」


嫌味っぽく言われて俺は顔を顰める。確かにの言う通り、俺がしょっちゅうこうやって女の子を連れ込んどると思われても、おかしくはない。せやけど俺は決してそんな男では、ない。基本的には。


の首筋に手を伸ばす。一瞬息を詰めたのを見計らって、その唇に触れるだけのキスをした。そういえば唇同士のキスは初めてやった。キスの1つもせんと体だけを求めた俺を、は一体どう思いながら抱かれとったんやろう。


「…、」


名前を呼んでやると、が潤んだ目で俺を見た。俺はもう一度その唇を掠めると、白くて細い首筋に、真紅の痕を残してやった。